MUSIC

KANYE WEST『YEEZUS』

WASPというアクロニムをこの10年代にあえて表に出すことは、何らかの反語要請を含む。肌の色から、ポリティカル・コレクトネス(PC)的に保守的であることと言おうか、貧富、地域、経済格差を越えたZIPコードで守られたコミュニティ形成に関しての導路を敷く…

くるり「ロックンロール・ハネムーン」

《窓辺にうつった ひろがる田園のような 光に満ちあふれた 未来が手招きしてるから》 (「ロックンロール・ハネムーン」)くるり流の清冽にしてやはり、変化球を込めたシティーポップスというのだろうか、それにしてはファンファンのトランペットの響きが招…

2013年上半期私的5Songs

2013年上半期ベストの時期ということで、豊作だったのは紛うことないですが、私にとってはよりコンセプチュアルにかつ、洗練化したものに意識が向かった気がします。先行配信やフリーダウンロードで「いい曲」がフックされましても、アルバム総体は微妙だっ…

日常に疲れたときの五枚〜ポピュラーミュージック

経済機関誌用に寄稿したものの転載・加筆にて。***今年は、まだ五ヶ月ほどしか過ぎていませんが、この読者の方々には転機や変わり目を迎えた方も多いと思います。また、同じ仕事をしていましても、春時期は周囲が変化しやすく、つい思わぬ疲れも出ている…

スピッツ「さらさら/僕はきっと旅に出る」―見られていない間の自由

シングルとしては約2年8か月振りという間隔よりも、2012年に『おるたな』があったのもあり、近年、シングルの意味が変わり、よりライヴ志向になっているムード下で、ふと届いた、という感触を得た。2012年のファンクラブ・ツアーでも、新曲を幾つか披露し、…

Thinking about seeing BLUR at Jarkarta

インドネシアは、総体人口は約2億4,000万人を越えた、と公的にいわれている。さらに、ジャカルタなどの都市部における血気盛んな層はネット・リテラシーが高まり、今回のBLURでも兎に角、海外の映像をディグしたり、音源のダウン・ロードをしたり、ネットか…

【REVIEW】SUEDE『Bloodsports』

スウェードが実に約11年半振りとなるオリジナル・アルバム『ブラッドスポーツ』を上梓した。と聞いても、フロントマンたるブレット・アンダーソンはソロで活発に動き、日本でライヴする際にはスウェードの曲を演奏することに躊躇は惜しまなかった。***ス…

キリンジ『Ten』によせて

ずっと彼らの来し方を追ってきた人ならば、シンプルに、なおかつ成熟を包み込んできた前作『Super View』の時点で、予想は出来たかもしれないが、同時製作で進められたこの『Ten』(http://cookiescene.jp/2012/10/super-view.php)では堀込泰行、堀込高樹二…

【REVIEW】Manuel Bienvenu『Amanuma』

この時代におけるリアリティとは、どんどんレイヤーが複層的になっているとさえ思う。電車で隣り合わせても、ヘッドフォンやスマートフォン越しに遠い誰かとのコミュニケーションをしているとしたら、その距離的なリアルはヴァーチャル且つ分岐してゆく浮遊…

things that you know about RADIOHEAD is a little bit-prelude

近く、連載としてある媒体で英語で始めますが、今回はあくまでプレ版として日本語かつフリーミアム的に。もう今はなくなった、大阪は日本橋の電気街のマンションの一室のブートレグ・ショップでレディオヘッド、前身のオン・ア・フライデイの音源を漁ってい…

YUMECO RECORDS 2012.03〜

2012年3月1日vol.4 「京都の風合と、くるりの音楽」 http://www.yumeco-records.com/archives/7632012年08月14日vol.8 「言語差を越えて、誘惑を−LILLIES AND REMAINSを巡って」 http://www.yumeco-records.com/archives/11872013年01月06日vol.11「小さなメ…

COOKIE SCENE2010.03〜2013.03

2010年3月ボブ・ディラン・ライヴ・レポート http://cookiescene.jp/2010/03/live-report-at-zepp-311thu.php#more 2010年4月サニーデイ・サービス『本日は晴天なり』 http://www.cookiescene.jp/2010/04/rose.phpフライング・ロータス『コスモグランマ』 ht…

RADWIMPS「ブリキ」によせて

以前、彼らの『絶体絶命』(http://cookiescene.jp/2011/03/radwimpsemi.php)について書いたとき、偶景(アンシダン)の感じられなさとともに、そのオブセッシヴなまでに張り詰めた内容にやや距離があった。思えば、リリース日は2011年3月9日。今から考えて…

【REVIEW】DAVID BOWIE『The Next Day』

いわゆる、ベルリン期の彼を愛する方はいまだに多い。70年代後半にシーンを席巻しつつあったパンク、ニューウェーヴに背を向けるように、深くブライアン・イーノと潜ったサウンドの実験。先ごろ、ベックが一夜限りの豪奢な企画パフォーマンスで1977年の『ロ…

スガシカオ「アイタイ」について

事務所を離れ、独立後のスガシカオの動きは急速に着実に展開されてゆくようで、フェスやイヴェントの参加、アコースティックやバンド形式のライヴ・ツアー、SNSの多様な使い方まで含めて、これまで以上に「独り」としてのジャッジと覚悟が要所で見受けられた…

くるり「ばらの花」再考―現代におけるナースリー・ライムとして

由縁もありまして、昨年の京都音楽博覧会の当日、そして、その後のライヴ・ツアー会場で売られ、今では通販でも手に取ることが出来るようになりましたくるり公式旅冊子『HOW TO GO』(http://www.quruli.net/goods/detail.php?cd_shop=136)に、短いテクスト…

【REVIEW】電気グルーヴ『人間と動物』

電気グルーヴの待望の新作として捉えられる層はおそらく、それまでの彼らをよく知り、石野卓球のDJ、外部ワークス、ピエール瀧の動きを踏まえて、対峙したのだと思う。少なくとも、近年では、08年の『J-POP』、『YELLOW』の二枚、ツアー、纏められたDVDでの…

ASIAN KUNG-FU GENERATION「今を生きて」を巡って

あの日以降、意識が変わらなかった人はいないと思う。少し前の「セカイ/系」といわれたタームの逼迫が経済的な与件で押し迫られた00年代が簡易な形で10年代の景色が「世界そのもの」としてロールオーバーしてゆく様は少し辛くもあり、そこに金融経済、天災、…

ATOMS FOR PEACE『AMOK』を前に

トム・ヨークというイコン性に準拠せず、色眼鏡なしに聴くならば、そこまで劇的で斬新な作品ではなく、フラットに受容出来る。そもそも、レディオヘッドがやや自家中毒的にエレクトロニクスとポリリズミックにグルーヴの折衷を高めていったのに比すると、自…

【REVIEW】0.8秒と衝撃。『【電子音楽の守護神】』

オマージュに対する、オマージュは確かなオリジナリティに近接する。昨年のEP「バーティカルJ.M.ヤーヤード」(http://cookiescene.jp/2012/05/08jmepact-wise-evol.php )内の「NO WAVE≒斜陽’」のMV(http://www.youtube.com/watch?v=wotG6OIfArY)における…

【REVIEW】コンボピアノ-1+ヘアースタイリスティックス

まず何よりも、中原昌也の手掛けたアルバム・ジャケットが良い。ザ・ザの一時期のアルバム・アートを担っていたアンディー・ドッグ・ジョンソンのような色遣いの鮮やかさとディプレッシヴな雰囲気が収められている。しかし、内容の方はというと、最初に聴い…

【REVIEW】Jóhann Jóhannsson『Copenhagen Dreams』

現代音楽におけるモダン・クラシカルの魅力性が大きかったのは古典と前衛のアウフヘーヴェンを一回性のアートに閉じ込めようとした試みのみならず、ソニマージュ、son(音)にimage(映像)が連動するかのような、技法とその俯瞰的な認知にあったのではない…

【REVIEW】Francesco Tristano『LONG WALK』

この『Long Walk』は、2012年の3月12日からの数日間、日本は京都でレコーディングされていた作品であり、現代における彼のマルチに開かれた知性の一端を知ることができる。ルクセンブルグに生まれたフランチェスコ・トリスターノ(http://cookiescene.jp/201…

【REVIEW】くるり「Remember me」

音楽の届けられ方や形式の再定義が迫られる峻厳な時代になりながら、アナログをメインにしたり、精緻に音質に拘ったCD、ブックレット、付随する写真集やDVDまで美学を通している姿勢や配信との鬩ぎ合い、その中で最良の音楽の届け方を模索し、希いを託す表現…

THE PRODIGY『THE FAT OF THE LAND』

1997年の時点、今ではトリップホップとロックのダイナミクスをプログレッシヴに織り上げたレディオヘッド『Ok Computer』、まさかの再生後の世界的ブレイクを果たしたザ・ヴァーヴ『Urban Hymns』、独特の過剰性を音像と共振せしめたビョーク『Homogenic』と…

ジャンゴ・レコーズ25周年によせて

近鉄の奈良駅を降りて、奈良公園の方に出ず、ひがしむき商店街を歩き、大きな三条通りを跨ぎ、正月などによく特集されますお餅つきの早い中谷堂のすぐ隣のもちいどのセンター街を少し歩けば、小さな看板「Django Records」というものが出ています。 昨年で開…

モダン以降、で

まず、確認事項として「モダン」って言うのは、19世紀半ばから20世紀初頭にかけての汎的に「モダニズム」と呼ばれる運動体とリンクしています。文学畑のヴォードレール、ジョイス、建築畑ではウィーン分離派、バウハウス、アドルフ・ロース、ル・コルビュジ…

COOKIE SCENE 2012

今年もクッキーシーンにはお世話になりました。以下、僭越ながらも、書かせて戴いた本年分のレビューです。2012年1月NILS PETTER MOLVAER『Baboon Moon』 http://cookiescene.jp/2011/12/nils-petter-molvaerbaboon-moon.phpVARIOUS ARTISTS『Noise & Chill …

くるり「Remember me」―遠心力を持つ日常

2012年のくるりは元来の岸田繁、佐藤征史の二人の骨組みと言えるメンバーにファンファンと吉田省念の正式加入、四人体制になり、精力的な活動と10枚目のオリジナル・アルバム『坩堝の電圧』での多様な音楽性の展開、そして、何よりも震災以降の日本に、音楽…

予め歌われることのないラブソング―岡村靖幸を例に

ポップ・ソングが突き詰めた形でラブソングに辿り着くとするとき、何故に日本中、世界中に溢れるラブソングはどうして尽きないのか、考察を巡らせてみることに致しました。ラブソングと言いましても、I LOVE YOUが男性側、または、女性側から異性へまたは同…