My Private Best 30 Discs 2015

2015年は世界の現実がより峻厳になってゆく中で、カルチャーの強度をもう一度、見直し、古典を捲りながら、同時に、そこへアクセスできる権利が誰もが持てるようになっている”よう”で、「都市(中心部)」はよりヴァーチャルに、排除のための第三者の壁を設定していくような錯視性も憶え、そこで意味を持つ音楽の内奥によりドリーミーに、ロマンティックなものを求めたような気がします。政治、経済、環境、民族間問題、エネルギー、資源…未来への課題群が増えるばかりでしたが、シビアな状況にはシリアスなものというのも留保するとしまして、やはり「合わせ鏡」として、分かりやすく、刺激的で盛り上がる音楽は、「解り難い、現実の多様性」への理解幅を狭めてしまう可能性があるからで、刹那を縁取るといいますより、国境を越えやすくなった分だけ、漂白された問いではなく、国境を越えたあとを夢想させるような先の、鉄条網の前で響く音楽の意味を考えました。要は、サステナビリティのための答えを考えるための問いを作る段階。

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そうなってきますと、自然と音が持つ”発語の可能性”といいますより、”再想、対話の可能性”に連結する感情の内側には、新しいノスタルジア人工知能が発展し、テクノロジーが極度に人間の肉体性をときに奪う中での創造/想像性を刺激し、宥める、そんな緻密な音楽が適応するものが多く、その音楽の中で、十二分にこれからの「春」の季節の芽吹き、春を越えての行列の中で迷わない術に意味を馳せるという所作が出てきました。

この三十枚は、アクチュアルな意味で、何らかの古典の再解釈を挑んだり、それぞれにキャリアを重ね、行きついた闊達さ、現代音楽的要素を組み込んだオルタナティヴ・ミュージック、ポップな無国籍性を含んだものを選びましたのも、まだ終わり切れない2015年がその先にも続いてゆく“続き”のための文脈がありました。2015年の同時代性を帯びながら、ずっと再発見されるだろう何かとしましても。

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マックス・リヒターは、8時間の睡眠をテーマにしたアンビエント・ミュージックでもない、悠遠な作品を作り、ザ・イノセンス・ミッションは変わらず、音楽の躍動感、ポップネスを提示してみせ、デデマウスはこれまでと違うファンタジーに新たな物語を仮託し、ヒオール・クロニックは静謐な荘厳さを音像化したり、と馴染みのアーティストたちの充実に加え、ゼンカーブラザーズ、ハイク・サリュなどの気鋭のこれからも楽しみです。無論、ベテラン勢のブラー、ウィルコ、佐野元春などはまだまだ円熟ではない、鋭さがあったのも頼もしかったです。現実を抱え込みすぎたのならば、音楽の向こう側に想いを馳せてみる―そんな時間を敢えて取ってみますと、新たなパースペクティヴが拓けるかも、という願いも込めまして。より、反動の反動が生まれてくるうねりを感じながら。

1,Max Richter『Sleep』

SLEEP

SLEEP

2,Musette『Cosmic Serenade』

A Cosmic Serenade [Analog]

A Cosmic Serenade [Analog]


3,Owiny Sigoma Band『Nyanza』

Nyanza [輸入アナログ盤 / DLコード付] (BWOOD142LP)_148

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  • アーティスト: OWINY SIGOMA BAND,オウニー・シゴマ・バンド
  • 出版社/メーカー: BROWNSWOOD RECORDINGS
  • 発売日: 2015/09/12
  • メディア: CD
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4,Floating Points『Elaenia』
5,Zenker Brothers『Immersion』

6,ダニエル・クオン『ノーツ』

7,Nujabes Fea. Shing02Luv(sic) Hexalogy』
8,The Innocence Mission『Hello I Feel The Same』

9,Julia Holter『Have You In My Wildness』
10,De De Mouse『farewell holidays!』

11,Father John Misty『I Love You Honeybear』
12,Hior Chronik『Taking The Veil
13,Foals『What Went Down』
14, Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』
15,Battles『La Di Da Di』

16,Olafur Arnalds & Alice Sara Otto『The Chopin Project』
17,Nils Frahm『Screws』
18,Blur『The Magic Whip』
19,Leon Bridges『Coming Home』


20.Haiku Salut『Etch And Etch Deep』

21,本日休演『けむをまけ』

22,WilcoStar Wars
23,Marina Fages『Dibujo de Rayo』
24,高橋徹也『The Endless Summer』
25,Masayoshi Fujita『Apologues』

26,星野源『Yellow Dancer』
27,佐野元春&ザ・コヨーテ・バンド『Blood Moon』
28,Unknown Mortal Orchestra『Multi-Love』

29,Elintseeker『Geography Of The Heart』
30,Swinging Popsicle『flow』