MUSIC

through 2016-same on Julianna Barwick ###

2016年は「振り返る」のではなく、巨視すると、ずっと此岸から永い先へと繋がってくる悼みと望みの彼方を「見通せる」年だったのだと思う。もう日々の膨大な悲報/訃報にも流されないように構えているうちに違う単位(UNIT)が増えてゆき、禍福は糾える縄の…

黒沢健一さんについて

上方落語の名作のひとつとされる「たちぎれ線香」という演題がある。有名な内容なので周知の方も多いだろうが、船場の商家の若旦那と小糸という芸妓さんへの恋を巡っての悲しく、情味溢れる話。私的に、その好きなエピソードに実質的に現代に蘇らせた人間国…

スピッツ『醒めない』

はじめに) 近年は公式You TubeやVimeo等等でMVを発表して、その関連付けまでいかないケースがある。この前のフランク・オーシャンの急なリリースにも驚かなくなった。なので、今回の日本におけるビッグ・リリースのひとつ、スピッツの新作『醒めない』から…

My Private Best 30 Discs 2015

2015年は世界の現実がより峻厳になってゆく中で、カルチャーの強度をもう一度、見直し、古典を捲りながら、同時に、そこへアクセスできる権利が誰もが持てるようになっている”よう”で、「都市(中心部)」はよりヴァーチャルに、排除のための第三者の壁を設…

序)京都音楽博覧会2015−クールの予兆

1)早いもので、京都音楽博覧会2015 in 梅小路公園も今回の開催で9年目を迎えるという。もはや、日本の夏だけに問わず、一年中、各地域で欠かせなくなったあまたのフェスやイヴェントと比してみるに、やはりその都度の重みと彩味、独自のテーマがあらわれると…

ありあまる、実存

時おり昭和時代とまではいかないですが、昔のラジオなどの音源を聴いていますと、アナウンサーやナレーションの方のテンポが「遅い」と思ってしまうときがあります。ただ、よくよく考えますと、今の時代のテンポに慣れてしまっているのかもしれないとも我に…

Sweet Anger Revue

諸事で草取りをしていますと、てんとう虫を見つけて、しばし手の平で歩く姿を眺めていました。典型的なナナホシ。小さい頃はよく見つけては捕まえて、偽死したり、黄液を出したりするのを観察したものですが、改めてこの赤は警告を示しているのだな、とか、…

vita brevis,ars longa.

純然たるクラシックの棚の隣に呼吸を置かずに現代音楽の棚があり、想い出では00年代半ばを境目に装丁に凝った書籍風のCD、カセット・テープ、限定500などの語句とともに、視覚に訴えかける“雑然性”が自身の知覚を掻き乱した。よく訪れていた大型レコード店は…

BLUR『The Magic Whip』―遊びの空間性

2012年のロンドン・オリンピックは世界中継もされ、多くの人が観たが、競技そのもの以外に、開会式の豪奢な演出などから金満主義という見方もあれば、パフォーマンスの高さを称賛する声もあった中、その閉幕イヴェントを担った或る意味でUKを代表するアクト…

HARCO『ゴマサバと夕顔と空芯菜』を巡って

2012年にノーベル経済学賞をマッチング・プログラムの作成、制度への応用などにおいて評価され、受賞したアルビン・ロスは「市場」という暗黙の前提に疑義を呈す。既に市場はそこにあって、決まった言語で話せば“いいようになっている”が、実のところ、特定…

くるり「NOW AND THEN」を観て

1)「滅びの気配があるから、万象は美しい」と云う。その気配に怯えているようでは、額面のままの現実は拡張されてゆくばかりで、ときに過剰に「造形」されてしまう。CGの淀川長治があの口調でCMに出ながら、齢80を迎えた浜村淳は月曜日から土曜日まで、お決…

サザンオールスターズ『葡萄』を通じて見える遠望

《悲しい事は 言葉に換え 星を見上げて そっと歌うといいよ》 (「アロエ」)自分にとってサザンオールスターズとはいつも距離感のあるバンドで、それは、比較はできないものの、ミスチル、スピッツといった90年代から今に続くバンドに思春期が適応したとい…

BOB DYLAN『Shadows In The Night』

過去にも単発的にはあったが、2015年の今、ディランがこうしてシナトラが取り上げた“スタンダードを歌う”という行為性にはアメリカの深い(大衆)音楽の根脈を再定義せしめる、そんな大層な意味合いよりも、例えば、イブン・ハルドゥーンの言うところの“文明…

スガシカオ―パラレルに拓かれるセカイ

ぼく一人 だけになったら“死”と同じだから 自分殺して 過ごした 沈んだ プールの底のような日々 (「モノラルセカイ」) プールの底のような日々から、仰ぎ見る太陽は不思議な揺らぎとともに、柔らかな光の優しさ/遠さをもって目に映る。スガシカオが時おり…

“メロディー”を探す「Melody」の歌

誰かが気付くフレーズは誰をも阻害する)大病や壮絶な現実、またはハレたることに巻き込まれた人がそれまでとは視ている景色が全く違った、ようになったという事例がある。花の香りに敏感になった。感情の機微が繊細になった。人生観が変わった。多様に言わ…

ヒラセドユウキ『Monochrome』について

不世出のフランスの作曲家、エリック・サティは1920年にいわゆる、室内楽曲「家具の音楽」を作曲したが、それは、日常の生活を遮断することなく、そこにただ、ある音楽を目指した。結果として、様々な解釈はあるが、ミニマルで甘美な楽譜から零れた余白が日…

My favorite worldwide 5 MV of the first half year 2014

最近は、MVも凝ったものや、予算をさほど掛けていなくとも、クールなものが増えてきていますし、世界中がRelatedしていますのもあり、繋がってゆく映像にはある種の意味が同時に透けて見えたりしましたが、上半期で個人的に魅かれましたものを5つほど。暗が…

奈良のジャンゴ・レコードを巡っての雑考

奈良のジャンゴ・レコードを巡った記事が話題になっているようです。【コラム】 県外就業率1位の『ベッドタウン』奈良県にあるレコード店「django」http://ki-ft.com/column/nara-django-records/今のレコード業界並びに、奈良という独特な地域での変容の中…

My favorite Japanese 10 songs of the first half year 2014

あくまで個人的嗜好としまして、季節外れでもありますが、2014年の半年で魅かれました日本の曲を10曲ほど。***Lamp「シンフォニー」 ふと遠国から思わぬ便りが届きますように、”ソング・サイクル”をめぐり、日本の湿った抒情をシティ・ポップとして預ける…

京都音楽博覧会2014について

序文をまず参考までに。 リンク先も時間がありましたら、見て頂けましたら。【八年目の京都音楽博覧会、つながる国境】for musipl http://www.musipl.com/articles/article/00013.html ***さて 続きまして、京都音楽博覧会についてのライヴ・レポートを。…

くるり『The Pier』巡礼 Pt.1

Pt.1悲しみの時代を生きることは それぞれ 例えようのない 愛を生むのさ (「loveless」)くるりは、不思議とシングルや単曲で浮かび上がるアウラがほぼ何らかの“直線的な”イメージ、オマージュと近似迂回するのと比して、アルバム・タイトルは反語的な要素…

スガシカオ「LIFE」という名詞

1)再確認ほどの大層なものではないが、“life”は名詞であり、「人生」もしくは「生命」を指す。比して、“live”は動詞。「生きる」といった意味を含む。名詞はピン留めされる。だから、進行形の唄を進んできたスガシカオがこのたび二度目のメジャーデビューと…

工藤鴎芽『キネマ』によせて― 切断可能のロマンティシズム

1)選べない娯楽、拮抗する現実の不安 一般社団法人日本映画製作者連盟の発表による2013年(平成25年)の全国映画概況では、入場人員は前年比100.5%で1億6,000万人近くながら、興行収入は99.5%で、1,974億円で、公開本数は1,117本となっている。 存外、厳しく…

ルルルルズ『色即是空』によせて

ぬかるみの世界へ ようこそ ここから始まる (「ぬかるみの世界」)2013年に、結成したてのルルルルズのライヴを観た際に、インプロヴィゼーションの妙、音楽がふと、沈黙するときの美しさによって、よりバンドとしての訴求性が出てくるかもしれない、という…

on your incurable romantic world

チバユウスケは08年の詩集『ビート』のあとがきで以下のような旨を記している。チバユウスケ詩集 ビート作者: チバユウスケ,中村水絵出版社/メーカー: フォイル発売日: 2008/11/06メディア: ペーパーバック購入: 7人 クリック: 56回この商品を含むブログ (19…

バイーアに行ける日まで

00年代の終わりに有給を二週間用意して、フリーチケットを取って、サンバ・パレードの時期のブラジルに行こうとして、頓挫した経験があります。それは、私は死ぬまでにブラジルに、特にバイーアに行かないと気が済まないという位の想い入れがあるのは、やは…

GREAT3『愛の関係』を巡っての雑考

しっかりしたレビューは媒体にて書こうと思っていますので、あくまでイントロダクション的に。追記:排除しないこだわり ―GREAT3『愛の関係』によせて http://www.musipl.com/articles/article/00003-matsuura-01.htmlとして、UPされております。***哲学…

my private 5 selection of Romania Modern Minimal

ルーマニアの“ダンス・ミュージック”と括るには限界があるのは、地域性とグローカルという流れの中で、メディア的にピックされる北方のバカウから一気に人気を博し、DJ兼サウンド・プロデューサーのRARESHや、もっと汎的には拓けたダンス・ポップの要素を包…

BATHROOM SKETCHES『(…Across the)Yellow Town, Pink St.』によせて

数え切れない歴史、先達への敬虔に溢れたバンドである。バンド名のBathroom Sketchesにはパステルズからフリッパーズ・ギターなどのインスパイア、そして、ボーカル・ギター・シンセを負う青野氏は音楽ライターとして、自身のバンドに関してもそのインスピレ…

NEDAVINE『At Rest』

昨年後半から今年、2014年になり、ルーマニアン・モダン・ミニマル、ウィッチ・ハウス以降にインダストリアル・サウンドとIDMがシンクしたサウンド、エイドリアン・シャーウッド的なダブ意匠の深い音が増えてきているのを感じる。つまりは、レベル(REBEL)…