NEDAVINE『At Rest』

昨年後半から今年、2014年になり、ルーマニアン・モダン・ミニマル、ウィッチ・ハウス以降にインダストリアル・サウンドIDMがシンクしたサウンドエイドリアン・シャーウッド的なダブ意匠の深い音が増えてきているのを感じる。つまりは、レベル(REBEL)の気配。

それは、過度にオーガニックに有機的な音へのアンチ・テーゼでもあり、硬質な音を重ねることで、聴覚や五感そのものを刺激する、それこそ「音の政治性」に自覚的になっているという証左でもあるではないか、とも思う。

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振り返れば、ニューレイヴと蛍光灯ファッション、EDMとアート・シーンの親和と比すると、デトロイト・テクノが一時期、担っていた何かがルーマニアン・モダン・ミニマルには感じる。それは、世界は広いという可能性を示すのではなく、むしろ、世界の情勢により、ゲットー・カルチャーやベースメント・ミュージックは再規定されるという「狭さ」を意味する。このUK出身のサウンド・メイカー兼サウンド・デザイナーNEDAVINEは幼少の頃には、ジャングルやドラムンベースに魅かれたというが、今作にて構成する音は緻密に、移相性に自覚的であるように思う。佳くも悪くともNUMBのようにストイックでハードでもあり、ビートの響きにはオウテカを初めとした00年代以降のセンスを感じさせ、しかし、静けきアンビエンスにはやわらかな音風景を運ぶ。

“無機的な有機性”という撞着を越えて、この新作『At Rest』には過去に、クラークやプレフューズ73や、はたまた昨今のゴルジェなどが取りこぼしたともいえる、オリジナルな切迫とガラスが床で割れる音そのものが電子化される過程で聴覚から身体知までを響かせる何かがある。

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「LAX」のような牧歌性とダンスの機能性を持った曲から「Birdsong」での一時期のKEN ISHIIみたくフロアーライクなものまで多岐に渡る曲が分離せずに、牽制し合いながらも、彫像画が出来上がったその前を思わせてしまう、そんな完璧ではない余片が良い。

そんな余片と、『At Rest』≒“安らぎを”というアルバム・タイトルが奇妙に共動する点を聴き手各自で、探してみるのもいいかもしれない、細部にまで意識が張り巡らされた充実したこの時代とのズレがない作品だと思う。


At Rest

At Rest