ゴールデン・ウィークは徒然に

雑記的に。周辺で話題になっているのが週刊ダイヤモンドの特集『年収1,000万円の不幸』。

デフォルメとステレオタイプ化された一部の内容は別にして、1,000万円じゃない年収層以外にも興味深い示唆が幾つか示唆されている。例えば、年収があがれば、税金など増えるのは認識裡にあれども、その境界線がかなり意図的になっている。大和総研がおこなった、”年収が100万円増加の折、どれだけ税金などが天引きされるか”という広義の限界税率試算では、年収700万辺りで急激にあがる。夫婦の一方が働き、3歳以上中学生以下の子供の4人世帯を対象としているが、900万円から1,000万円に上がると、税率は50%を超えてくる。

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今春、ベアが多くの企業でうまくいき、今まで非正規だった社員を正社員に上げる企業も増えてきた。同時に、買い手市場の波があり、多種多様な求人広告もよく見受けられる。色んな企業、組織の方と話をすると、「人材が足りない」という話になる。しかも、一様に、35歳辺りから40代半ばの中間という言葉も微妙だが、管理できる層。副因は団塊の世代が確実に定年退職を迎えていること、バブル世代の管理職へのマスを絞りすぎたこと、30代の人材のキャリアを重ねた人たちの相対的なマスの少なさなどが複雑に絡み合っている。ただ、買い手市場ながら、その「人材」の条件を見れば、大学院以上卒業、企業での事情企画経験が最低〜年以上、TOEIC730点以上、など明確に打ち出されていたりする。過去の経歴とすぐに動ける管理層といえばいいのか、そういった枠を求めているケースやシンクタンク教育機関でも、条件付けがある程度、シビアであるが当て嵌まってくる層もいる。しかし、その当て嵌まってくる層は即座に、今の波を読むのではなく、天秤にかけて、リスク・ヘッジする。だから、ヘッジされている間、何度、「人材募集」の公募を掛けても、人が集まらないというのは、市場がとても限定的で拡がりがないからでもある。

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限定的で拡がりがない、という意味では、日本での2014年度の税制改正大綱では、ますます負担の幅を絞ってきている。所得税の給与所得控除の上限設定。児童手当など。また、女性の社会進出というスローガンの下に配偶者控除の廃止・縮小の検討、見直しとともに、3号被保険者制度の見直しも行われようとしている中、共働きが優遇されるという簡単な絵図ではなく、家計内での保険、医療費や教育費が峻厳にもなる。最低限の食費、水道・光熱費、住宅ローンや毎月の必須のものから、割合配分をどうしてゆくか、それは制度改正が進んでゆく前に、「判断」しないと、予備リスクを回避できない。“思わぬ出費“という感覚よりも今は”貯蓄による予期安心“を取らないと、少し先の不安も拭えない心理が現役家計内に降りてきている。

だからでもないが、リタイアして、そこそこに元気で富裕な高齢者層、祖父母層を狙ったマーケティングが多岐に渡り、賑やかになる。祖父母と孫の関係性は利害関係でいえば、非常に友好的で、祖父母は孫への投資は惜しまず、孫は祖父母の存在を有難く思う。無論、そういったケースがしっかり成り立っている条件には幾つもの箍がある。老齢者にとっては健康がありきで、そこに、病気への不安、年金、貯蓄の問題など尽きず、だから、資産運用関係の手合いが65歳以上をターゲットにしたものが増えているのも”手元の増えることはない原資”をいかようにするか、考えないといけないということでもあり、分厚い手引き書を読みながら、NISAから新興国株までの投資に対しての意欲がとても高い。

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先ごろ、地方の巨大なショッピング・モールに行ってきたが、つねに店の配置やどんな店が入っているのか、客の流れ、客層の動きを気にしてしまう。そのモールは新興だったのもあり、山の中にあった。近くには、これから建とうとするマンションが幾つか見え、駐車場は約3,500台、駐輪場は約850台停められる。シャトルバス、公共機関の導線もまだカンファタブルではないが、敷かれ始めているという様子で、中はやはり画一的なモールといえるものの、細部において、網羅しようとしている点がサービス設備の面の充実で、映画館や雑貨、インテリア、ファッション以外に、眼科や英会話教室輸入車販売まで”一緒くた“のようで、一施設内で”分離ではなく、融和に向かおうとしている”のが興味深かった。土日、休日に大型ショッピング・モールで映画、ショッピング、食事で過ごすなんて絵は珍しくなくなったが、ウィークデイのみならず、日常の中にも利用させるための導線があり、情報量の多さはあるものの、そこで完結できるパフォーマンス・コストはとても効率的だとも思った。フードコートもソファー席の充実から、テラス席までゆったりした構造になっていて、どうにも食べるのを急かされるようなムードは減化していた。

三世代、祖父母―父母―子供の姿も当然、多かったが、高齢者に向けたバリア・フリーや休めるスペースを増やしているのも興味深く、この5年ほどで郊外で巨大化するモールの変容はなんとなくは感じてはいたものの、ファスト化、撤退戦略ありきではない、”馴染むことがありき”の形が導入されてこようとしているのかもしれない。ひとつ、大きい施設が生まれ、人の往来が生まれたら、市場ができる。市場ができれば、生産人口が増える、生産人口が増えれば、地域は活性化する。全部がそう単純にはいかないのは道理だが、安定を待つ町よりも何か生み出すことで、累乗化する利潤や社会サービスはある。

このゴールデン・ウィークはそういったことを徒然と考えながら、頭をオフラインにしている。