窮鼠、猫を噛めるための言語速度

《ごめんなさい、大学に行かしてもらって なんにもせずに五年!
輝いていたあの頃と悪い意味で俺は変わってない》

(「キャベツ」)

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2012年度の内閣府の「若者雇用を取り巻く現状と問題」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koyoutaiwa/dai7/siryou1.pdf)という資料を見れば、正規雇用1,756万人のうち、在学中を除いた非正規若年者(15歳〜34歳)は414万人とされ、正社員転換を希望している者はおよそ170万人というが、2011年度の総務省の統計調査では、総労働人口は6,545万人、1998年の6,793万人をピーク・ラインに下降していっている。問題は、表景化する少子高齢化だけではなく、雇用体系の制度論や、転職、再就職におけるシステムのサステナリビリティに準拠し、複雑に絡み合っているように思われる。改正労働契約法もあるものの、これからより国内の労働環境そのものというよりも、若年層が労働する意味がそのまま生/死と社会的生活からの阻害に繋がってくる憂慮は既に出てきている。

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キュウソネコカミのライヴを初めて観たのは、0.8秒と衝撃。のジョイント・ライヴの際で、捲したてる好戦的な歌詞と野放図な雰囲気が印象に残り、その後、音源を聴いて、自棄の裏に内省、注視されがちな好戦性だけではない真面目さ、そして、若者として生きている間に擦り減ってゆく未来や自身の周囲に対しての何らかの違和をときに、ストレートな憤怒や葛藤に変えて歌うところに気が魅かれた。「DQNなりたい、40代で死にたい」、「フェスいきたい」、「役立たず」、また、SNSに囲まれた生活への皮肉を込めた「ファントムヴァイヴレーション」(http://www.youtube.com/watch?v=7_58aTTukqs)から「サブカル女子」(http://www.youtube.com/watch?v=5QlPMfkCTaw)といった曲のMVでは、具体的な事象への挑発を厭わない。

リリース・ペースが早い中、ファースト・ミニ・アルバムとなる『ウィーアーインディーズバンド!!』でも、自己揶揄と開き直りのような鋭さは増していて、さらに毀誉褒貶は分かれようが、《音楽で飯は全然食えない》、《ウィーアーインディーズバンド!!》と冒頭から始まり、ダンサブルなロックンロールに他愛のない、空芯菜の美味しさを綴った歌詞から、DJに対しての斜からの視角なども含め、聴後感は悪い気はしない。

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たとえば、気になる誰かをエゴ・サーチしたら出てくる揶揄、罵倒の上位順位を考えたり、文字で刻印されてしまうがゆえの反転としての耐久力のなさ、みたいなのを筆者はアダプトするが、つまりは、強い言葉ほど「弱くなっている」倒錯はこんな時代だからこそある。ゆえに、もどかしさとともに、言葉数は増えざるを得ない。理由、文脈を付けるためのオチは自己糾弾にもなってしまうからで、そのときの挑発はきっと仮想敵が多すぎる瀬ではどうしても散逸してゆくのかもしれない。だからこそ、もっと言葉数は増えていき、過剰なまでの説明付記を入れながら、言語「速度」は上がってゆく。そのエントロピーを解析できるだけ、抽象イメージが雁字搦めにならなくなったときに、言葉とリズムは再び届く対象を目指せばいいとも思う。

ウィーアーインディーズバンド!!

ウィーアーインディーズバンド!!