経済成長という春のそばで

マレーシアの今度の選挙の軸は、経済成長への視角でしょう。「ETP」と呼ばれます経済改革プロジェクトがあるのですが、そこにおきまして、インフラや石油などに膨大な額が投下されまして、以前に行ったことがありますが、イスカンダルという凄まじい工業団地がありますが、そこもその一環です。

東南アジアが今、軒並みに見ています市場はやはり、「資源」、そして、金融経済上の「掛け」。資源獲得競争が世界中で起きているのは日常のニュースで散見されると思いますが、後者は投資家対象に動いていますゆえに、見え難いかもしれません。要は、日本の円安も新しい政権変化に伴います「期待」やこれからの日本の再編という見方は一部で、大規模投機筋が「円」をコントロールしているとも言えます。

「投資」と「投機」の違いについては、投資は簡単に言いましたら、何らかの利益拡大、発展見込みのために資産を運用、投じること投機に関しては機が入っているとおり、機会に準じて場を読んでの利益や発展とは無関係な場合も多いということです。株式投資マネーゲーム下で生まれた行為性で、近年のヘッジファンドの隆盛を考えますと、少し分かるかもしれません。ロング・ショートと称されます投資戦略、有価証券のロング、買い持ちとショート、売り持ちの相互ポジションを同時に取ることで、ヘッジ出来る、そういうところから由来の説がありますヘッジファンドは、本質的に絶対的な利ざやのための姿勢を保ちますが、動かす単位があまりに大きい額なために、ひとつの権力といいますか、金融経済や株式を揺らがし、そこから実体経済への波及影響を与えてしまうというところがあります。


【参考】
日本銀行ヘッジファンド研究会〜ヘッジファンドの変遷と金融システムに及ぼす影響
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g71221d02j.pdf

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経済施策は、景気刺激とともに市場や民間企業に歓待はされ得ますが、マレーシアのETPで実際に政府発表ほどの恩恵を受けました民間企業がどれだけあったのか、という懐疑も出ていますとおり、一部層がより富む形式作りをしているのではないか、という懸念は実際、出てきています。最近では、ニューノーマル、新しい中間層という人たちがインドネシアなどでも生まれ、それらの層の購買意欲に投資するために多くの企業が進出し、つまり、簡単に言いましたら、「快適」や「成長」を換算しようとしている訳ですが、例えば、回転寿司でもそうですが、当初、寿司は贅沢嗜好品で、日本では必需ではないものでした。

つまり、在っても無くても、「生活」してゆくには支障がないのですが、100円という単価に落とし込み、仕入れチャネルを世界規模に多様化させ、チェーン展開させ、ある種のカニバリズム戦略を組むことで、一気に「日常」に溶け込みました。100円ショップでは、利益の幅で細かく重ね、儲けるのは知っているかもしれません。原価仕入れが極めて高いものと安いものがあったとしても、それらが纏めて買われれば、「問題ない」ということで、100円の回転寿司でも当たり前に中トロなどが並んでいましても、その他の原価率からしましたら利益幅が大きいものでカバー出来るということです。

その、カニバリズム戦略というのは詳細説明していきますと、複雑的になるのですが、例えば、近距離に同じようなコーヒーショップやドラッグ・ストアなどが並んでいる風景を見ることがあると思います。それは何故なのだろう、と考える方もいるでしょうが、共食いしながら、総体的に利益確保出来ればいいということで、寡占的に店舗のマッピングをするというのは今の時代は人の流れからそこでの規模の経済まで把握されていますから、安全なブルーオーシャン(澄んだ青い海、経済的用語で、まだ未踏的な市場)で遊泳するのではなく、レッドオーシャン(既に、ある市場)の中で鬩ぎ合うことで抜けていこうとする訳です。

そこで問題になってきますのはレッドオーシャンで市場退出を余儀なくされたところ、つまりは「共食い」の果てに総倒れになった場合は“撤退という戦略”が即座に打たれます。これが最近、都市や地方でも地表化してきています買い物難民を産むことになるのですが、要は、大規模チェーン系の店が日常の「在った」場所に進出して、地域密着型、個人経営系を淘汰しながらも、自己都合で撤退した後に空地になってしまうという倒錯の下、普通の買い物さえ出来なくなる、そんな不条理が出てきます。敷衍しまして、「敵対的買収」という日本語で見ますと、不思議な言葉がありますが、新聞やニュースで頻繁に行き交うことが増えました。

敵対的買収といいましても、特定の企業の株式をその企業自身の経営陣や親会社の同意なしに、TOB(株式公開買付け)などの方法で市場内外から買い集めるとはありながらも、実際は裏付けがあり、親交的な買収が多いですが、ただし、母体としましては、子会社化、系列化することにより、肥大してゆく訳です。先ごろ、ダイエーを子会社化しましたイオン・グループなどはもう凄まじいことになっています。

そういった巨大グループ同士が市場を占拠することで、では、そうではない利益追求をそれぞれがしてゆくとなりますと、これから、の種蒔きと同時並列に経済成長をしていこうとする新興国ニューノーマル層や、日本では比較的、自在に使えるお金が多いセカンド・ライフ層にターゲットをあてることになるのは必然ですが、映画を知らなかった人たちが映画を観るようになり、和食を知らなかった人たちが和食を知るようになる、異国を知らなかった人が旅行で異国を知ることになる、良い面もありながら、ロシアでの過度な日本食ブームや中国でのマグロを巡る過当競争など一度、味をおぼえてしまいますと、成長から退歩にはなかなか行けないディレンマが生まれます。

経済成長は是なのか、非なのかではなく、既に軋みが生まれています社会システムをどう再定義してゆくのか、パラダイム・シフトの中で考えることは尽きません。

消費するアジア - 新興国市場の可能性と不安 (中公新書)

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