my private best discs 30 2014 pt.4

ゆっくりと歩みを確かめるようにすすめていますが、このゾーンは”2014年”という年代を関係なく、その後にも残ってゆくのではないだろうか、と思います三枚を。言わずもがなのアーティストの新作もありますが、フラットな感覚で受け止めて戴ければ。

17,GINETTE CLAUDETTE『Tainted Emotions』

Tainted Emotions

Tainted Emotions

ドープで真摯なソウル・ミュージックにも良い作品が沢山、ありましたが、彼女はインディア・アリージル・スコットアリシア・キーズなどのネオ・ソウルの系譜を持ったスムースさが東星では必然的なヒップホップとの親和性を絶妙に融解させながら、メロウなトラックと歌唱で、オーガニックに届くという様は前述のアーティスト含め、シャーデーの一時期を思わせもしてくれました。

本当にストレートで衒いがないゆえに、というところもありますが、こういったソウル・ミュージックをフラットに届けられる場もあってこそ、ということで、ドミニク出身のジネットには期待してしまいます。アリーヤローリン・ヒルが彼女の源泉というのもありますし、過激で先鋭的でキャッチーとは言い難いものの、新しくもオーセンティックなソウル・ミュージックを築き上げていきつつ、末永く聴き継がれてゆく作品だとも思います。また、プロデューサーがオーガスト・リゴというのもなんとも道理がいきます。

16,FERNANDO KABUSACKI『The Champion』

ザ・チャンピオン (THE CHAMPION)

ザ・チャンピオン (THE CHAMPION)

ひとつの音作品としても成立し、なおかつ、作品の中でひとつの旅をさせてくれるようなものにも今年は魅かれました。飛行機、列車、人間そのものなどをモティーフにした作品は多くも、アルゼンチンのカブサッキの今作はアメリカのノスタルジックなロード・ムーヴィーに影響を受けているとのとおり、架空の脳内ドライヴをしているような気分になれます。しかしながら、不思議なのが徹底したコンセプチュアルさよりもオーケストラル・サイケ・ポップの絵巻であったりして、かつてのヴァン・ダイク・パークス、スフィアン・スティーヴンスの一部作品に感じ取れるようなマジカルな瞬間を接合、編集していったマッドな様に魅力を私的に感じました。

15,LUCY PATANE,MARINA FAGES『El Poder Oculto』

引き続きアルゼンチンから。
徹底的に加工・精製され、膨大な時間と多くの人が携わった音楽の凄さにも感服することはありましたが、こういうようなギターやチャランゴ、フルートなどを用いて、インストゥルメンタルで「どこかで、聴いたことのあるうた」を爪弾くスタンスからフィードバックもおおいに得ました。自分で憶えていたはずのわらべうた、っていざ子供や人前で歌ってみたりしますと、歌詞やメロディーが存外、いい加減、うろ覚えだったなんて体験をした人もいるのではないでしょうか。

昨年のマリナ・ファヘスのソロ・アルバムも美しく、今後への想いを満たしてくれるものでしたが、ポスト・ファナ・モリーナの巷間の冠詞は抜きに、どういった変化をしてゆくのか気になります。その前に、この友人のルーシーと組んだアルバムは、(矛盾していますが、)音楽を聴きたくなくなるようなときにこそ、自然と傍らで鳴っていたような風通しの良い佳作でしたのはやはりこの2014年に書き留めておきたいと思います。