recommendの設定について

このブログも一応は便宜的にカテゴリーを分けておりますが、
新しく、”recommend”という枠を作ることにしました。

レコメンドしますものは、主として、経済関連の書籍です。また、専門書も多く取り上げます。その際に、レビューではなく、説明要素を強めるがゆえに、短めのテクストに刈り込みます。別途、ミニ・ブログでやるよりも圧縮したものを、ということで何とぞ。

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『「幸せ」の決まり方 主観的厚生の経済学』
(小塩隆士:著、日本経済新聞出版社 2014年)

「幸せ」の決まり方 主観的厚生の経済学

「幸せ」の決まり方 主観的厚生の経済学

この書はまだ、未完成である。なぜならば、伝統的な経済学があえて迂避してきた情感、心理である「幸せ」に対し、社会学から社会疫学的な分析の手法を持ち込んでいるから、というのは一因にしかならない。経済的な豊かさが決して幸福感に繋がらないというパラドキシカルな観点を指摘したのは、フライ=スタッツァー(Frey and Stutzer)『幸福の政治経済学(Happiness and Economics)』はじめ、近年増えてきてはいる。その際に、富の再配分、ベーシック・インカムといった議論も呼び水にして。経済学が「効用(utility)」を指す場合には、理論経済学の俎上では「基礎的効用(cardinal utility)」、「序数的効用(ordinary utility)」の二種になる。

基礎的効用は測定可能とされるものを対象にする。序数的効用では、異なる状況、異なる環境で優劣の順位付けをつければいいというものだが、個の間の効用は比較枠には入らない。それでも、ある個の効用の改善がみられれば、世の中の改善も追認される。主観的厚生(subjective well-doing)は、自身の生活、仕事、結婚、健康、教育に対する満足の度数をはかってみようということであり、本書でも相対的所得仮説(他人の所得をどこまで気にするのか)の検証、家族関係、家事分担、結婚満足度、親と子供の関係性、働く場所と住む環境など身近な生活にオッズ比や説明変数を援用し、触れてゆく。

著者自身が「分析対象は、経済学だけでなく、社会学、心理学、脳科学社会疫学をはじめとする健康科学など多くの分野に共有できる精確のものである。」と記すとおり、見渡し図の契機にして、他分野との交差・共有のための叩き台になる内容だと思う。だから、この書は、まだ、未完成である。